ショーシャンクの空に
The Shawshank Redemption

1994年/日本公開1995年6月

前回はアメリカの本当の希望と自由を求めて旅をする『イージーライダー』をご紹介しました。今回は同じ希望と自由がテーマですが、刑務所という特殊な空間をテーマにした作品です。

以前、本コラムでも紹介した『スタンド・バイ・ミー』(86年)の原作者でもあり、数々のホラー作品作家として知られるスティーブン・キングの小説「刑務所のリタ・ヘイワース」をフランク・ダボランが映画化した作品。スティーブン・キングというと「スタンド・バイ・ミー」でも書いたように『キャリー』(74年)でデビューし、『シャイニング』(77年)や『ペット・セメタリー』(83年)などのホラーでも有名ですが、彼の作品の中にはホラーとは違い、同じ刑務所ものとして知られる『グリーンマイル』(96年)やアンソニー・ホプキンスが主演した「アトランティスの心」(01年)など、人間模様をさりげなく描きだす佳作映画も数多くあります。私は『ニードフル・シングス』(91年)が好きですね。

さて、同じ刑務所モノであり、同じ監督、脚本で映画化された『グリーンマイル』は、トム・ハンクスの主演でヒットしましたが、いかんせん内容に乏しく、前評判ほどではない作品でした。その点、本作は同じ94年に公開された映画に『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『パルプ・フィクション』、『スピード』などがあったため、ヒット作品にならなかったものの、’95年のアカデミーでは7部門にノミネートされ注目を浴び、ビデオが発売になるや否や、ファンが増え続け、いまや普及の名作と言われるまでになった作品。BOSSも何回も観た映画であり、好きな映画ベスト10に入る作品です。

ストーリーは長くてすいません。1947年、無実の罪で投獄された元エリート銀行員アンディ・ディフレーンは、数々の苛めを受けるなど苦労を重ねますが、あるとき刑務官が税金問題で悩んでいることにアドバイスを行い、刑務官に一目置かれる存在になって生きます。そしてその才能と落ち着きを認めた刑務所内の調達屋のレッドとその仲間たちとも仲良くなり、苛めを受けることはなくなりました。彼はレッドにロックハンマー(小さなハンマー)を要請し手に入れます。そして、次にリタ・ヘイワースのポスターを要請し、壁に貼りつけます。ある日、彼は刑務所内の図書係に任命されますが、それは表向きの仕事であり、本来は看守たちの資産運用や税金対策を代行するという刑務官たちの計らい。さらには所長自らが不正取引の書類作成をアンディに押し付け、アンディはもはや所内に必要不可欠な人材になっていきます。そんななかでアンディは刑務所内の図書室を改善すべく州議会に嘆願書を出し続け、ついには見違えるほど素晴らしい図書室の開設にもこぎつけます。そんなときアンディはレッドに「メキシコのジワタネホという太平洋沿いの海の町でホテルを経営したい。そのときは調達屋がほしい」という話をします。そして、アンディが入所してから20年目、コソ泥の罪でやってきたトミーが、アンディの無実を証明する事実を持ってきますが、不正発覚を恐れた所長は取り合わず、トミーを殺害、アンディを懲罰房に入れてしまいます。そしてある日、壁のポスターがリタ・ヘイワースからマリリン・モンローに代わり、ラクエル・ウェルチに代わるころのこと。各房の定期検査でアンディが逃亡したことが発覚します。彼は19年間かけて壁のポスターの裏側の壁をロックハンマーで削り、抜け穴を作っていたのでした。そして、アンディは所長たちの不正を世に知らせ、不正経理の金を自分のものとしてメキシコへ行きます。一方、調達屋のレッドは仮釈放になるものの、外での生活に馴染めず、思い切ってアンディの元をたずねる覚悟をします。

痛快な脱獄劇であり、途中で飽きさせることのない展開のストーリーも秀逸ですが、刑務所という特別な場所と、終身刑という深い刑罰の意味を感じさせる映画でもあります。
例えば長いこと刑務所にいた老人ブルックスは仮釈放が嫌だったものの仮釈放になり、外での生活に馴染めないため、自殺してしまうところ。それについて、調達屋のレッドが語る言葉が重い。“あの(刑務所の)壁がクセモンなんだ。壁を最初は憎む、次に慣れる、そして時間がたつと頼りにしてしまう。そういうものなんだ”。これは一般論に置き換えてみると、人の生き方、そのもののように思えてきます。例えばサラリーマンだったとしたとき、いつだって辞められる、という気分から始まり、次第に辞める必要が無いこと、そう簡単に辞められないことに気がつき、最後は会社側から来ないでよい、と退職させられる日の寂しさを思ってみてください。サラリーマンでなくてもそうです。若さという武器を失い、流されることに慣れていき、いつしか自分の人生に拘泥して生きている。そういうことを言っているかのように聞こえます。

もう一つ、良いシーンがあります。動画でも紹介しますが、アンディが図書室を改善すべく尽力し、根負けした州議会からの援助と図書館から寄贈されたなかにモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」のレコードが入っています。アンディは刑務官を出し抜き、このレコードを放送室から所内全部のスピーカーに流します。ここでのレッドの言葉、“俺はこれが誰の歌かしらない、知らないほうがいいことだってある。よほど美しい内容の歌なのだろう。心が震えるほどの。この豊かな歌声が我々の頭上に優しく響き渡った、美しい鳥が訪れて塀を消すかのようだった。短い間だが皆が自由な気分を味わった”という言葉が良いです。そしてこの曲を流しているときのアンディの幸せそうな顔が良い。まさにショーシャンクの空に響き渡る自由の歌声だったのです。

そして、この映画の最大のテーマに「希望」という言葉があります。それは前出したように刑務所と終身刑というものをあらわすうえで最も重要な言葉になります。
あるときアンディがレッドにいいます。「世界には石でできていない場所もある。そしてそのなかに誰もたどり着けない、誰も触れない何かがある。それは希望だ。」それに対してレッドは応えます。「希望は危険だ。希望は人を狂わせる」。しかし、アンディは脱獄した後、手紙でレッドにこう語りかけます。「レッド、希望は素晴らしいものだ。おそらく最も素晴らしいなものだ。そして素晴らしいものは死なないのだ」。そして最後に仮釈放違反をしてメキシコに向かうレッドのナレーションでの台詞が良いです。
「これからどうするか、ということだが、そこにはなんの疑問もないだろう。いつも、とどのつまりはふたつの選択のうちのどちらかになる。頑張って生きるか、頑張って死ぬか。アンディに会えるといい。国境を越えられるといい。親友に再会して、その手を握れるといい。そして太平洋が、夢に見たのと同じように青く美しいといい。それが俺の希望だ」
そしてラストシーン。これは観てのお楽しみですが、刑務所の暗さを一気に吹き飛ばす爽快な色が印象に残ります。

さて、主演のアンディ・ディフレーンを演じるのはティム・ロビンス。84年に映画デビューし、88年の『さよならゲーム』て注目されました。92年にはロバート・アルトマンの『ザ・プレイヤー』で主演を務め、95年に『デッドマン・ウォーキング』を監督し、自身もオスカーにノミネートされ、主演のスーザン・サランドンにはアカデミー主演女優賞をもたらしました。03年に『ミスティック・リバー』でアカデミー助演男優賞を受賞しています。近年では05年に『宇宙戦争』、『ザスーラ』などにも出演しています。個人的には99年にジェフ・ブリッジスと共演した『隣人は静かに笑う』が良かったと思います。
さて、共演者で調達屋レッドを演じているのがモーガン・フリーマン。いわずと知れた俳優ですが、この人は声が渋くて、本作でも担当しているナレーションが素晴らしい。『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)のときも脇役でしたたが、秀逸のナレーションでした。考えたらアカデミーをとったのが『ミリオンダラー・ベイビー』の助演男優賞だけだというのも不思議なくらい、印象に残る俳優です。本作のほかにも、『セブン』(95年)、『チェーン・リアクション』(96年)、『スパイダー』(01年)、近年では『インビクタス/負けざる者たち』(09年)ど多数に出演。個人的にはユーモラスな演技が良かった『ベティ・サイズモア』(00年)や『素敵な人生のはじめ方』(06年)が好きですけどね。

ちょっと語っておくと劇中で語られるリタ・ヘイワースとは、往年の美人女優で1940年代にはセックスシンボルとして一世を風靡した女優。本作の中で使われている出演作品は『ギルダ』(46年)。そして脱獄時の最後のポスターとなるラクエル・ウェルチもセクシー女優として名を馳せた人。本作で使われているポスターは『恐竜100万年』(65年)のときのものです。ここでも年代を意識させてくれます。

公開から17年余りの古い映画ですが、希望、現実、報い、償い、自由、様々な言葉が、いろいろな比喩を通して語られる作品として、今現在でも多くのファンがいる映画です。ぜひご覧になることをオススメします。

▼「ショーシャンクの空に」字幕付で紹介しています。
→ここをクリックしてください。

▼アンディが「フィガロの結婚」を流す名シーン。(携帯・スマホでは観れません)
http://www.youtube.com/watch?v=lsXegwO5QZE

▼本文にも書きましたが、アンディとレッドが希望について語るシーンです。
ここをクリックしてください。

▼「ショーシャンクの空に」日本版予告編
http://www.youtube.com/watch?v=P6V4iYjty3o

▼ネタバレですが、これがラストシーン。エンドロールの曲も良いですね。
ここをクリックしてください。

▼英語版の正式な予告編(1994年)

ショーシャンクの空に

自由とはなにか、希望とはなにか、
単なる脱獄物語ではない物語に感動します
間違いなしの名作です。


Make a comment

Name (required)

Email (required)

ウェブサイト

You can use these tags:
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

Trackback URL for this post.